今後、小売店にとって顧客管理が重要性を増していくことは間違いありません。なぜなら、店舗数の増加や人口の減少などを背景に、競合店との競争が激化するのは明らかだからです。顧客管理を営業戦略に活用できれば、顧客の満足度やロイヤリティを高め「顧客から選ばれる店舗」になれる可能性が高まります。
とはいえ顧客情報の集め方、管理の仕方がよく分からなかったり、顧客管理をどのようにビジネスに活かせるのかよく分からなかったりすることはないでしょうか?
この記事では、顧客管理を行うメリットや、顧客管理を使った営業戦略を成功させるための方法について解説しています。最後までお読みいただければ、顧客管理の重要性を理解したうえで、どのように取り組めばよいかまで明確につかめます。
顧客管理とは顧客との関係を維持・向上させるための大切な手段
顧客管理とは、顧客との関係を維持・向上させるための大切な手段です。
具体的には、顧客情報を収集・管理・分析して、顧客のニーズや行動を把握し、それに基づいたサービスや製品を提供することを指します。顧客管理を営業戦略に活用できれば、顧客満足度が向上し、売り上げUPにつなげられるようになります。
効果的な顧客管理は、リピート購入やロイヤリティ向上へとつながるため、現代のビジネス成長には欠かせない業務なのです。
小売店においても顧客管理は重要性を増している
小売店においても、顧客管理が営業成績に直結する重要な要素です。競合店舗がひしめくなかで優位性を確保するためには、顧客をよく理解しニーズに応えた戦略を打ち出すことが求められます。
ただし昔の個人商店のように、直接的な顧客とのコミュニケーションを通じたニーズの把握は現実的ではありません。現代の小売店では非対面でのセルフ販売、インターネット通販が増えており、商品カテゴリーも細分化されています。アナログな方法では顧客ニーズの把握が困難です。
しかし、現代はテクノロジーの発達が著しく、デジタルツールを活用して顧客情報の収集や分析、ニーズの把握が容易になっています。これにより、より効果的な顧客管理が可能となり、競争力を高めることができます。
顧客管理を行う3つのメリット
この章では顧客管理を行うメリットを深掘りして解説していきます。
- 既存顧客にアプローチできる
- 顧客情報を生かして販促を打てる
- 顧客を細かくカテゴリー分けしてアプローチできる
顧客管理を行うメリット1.既存顧客にアプローチできる
顧客管理を行う大きなメリットの一つは、既存の顧客に効率よくアプローチできる点です。
あらかじめ顧客の氏名や連絡先などを収集して保管しておけば、メール・LINEなどの手段を活用したマーケティング活動を行えます。既存顧客へのアプローチは、新規顧客獲得を目指すための広範なマーケティング活動に比べてコストが低く、販促費の削減に効果的です。
顧客管理を行うメリット2.顧客情報を生かして販促を打てる
データを活用して効果的に顧客にアプローチできる点も顧客管理の大きな利点です。顧客管理を行えば「属性情報」と「履歴情報」が蓄積されます。
属性情報:顧客の年齢、性別、地域、職業などの基本的なプロフィールデータ
履歴情報:顧客の購入履歴、ECサイト訪問履歴、問い合わせ履歴などの行動データ
これらの情報を活用して、さまざまなアプローチを複合的に行えます。
属性情報を生かしたアプローチの事例
若年層の女性顧客が多く購入する商品カテゴリを分析して、ターゲット層に特化したキャンペーンを展開。
履歴情報を生かしたアプローチの事例
過去の購入履歴を基にリピート購入のタイミングを予測し、リマインドメールや割引クーポンを送付。
こうした手法を通じて、個々の顧客に最適なタイミング・販促内容でアプローチできるため、顧客満足度の向上や売上の増加に繋がるのです。
顧客管理を行うメリット3.顧客を細かくカテゴリー分けしてアプローチできる
適切な顧客管理が行われていれば、複数の顧客をカテゴリー分けしターゲットを絞ってアプローチできます。このとき、デシル分析やRFM分析などの手法を活用して、カテゴリー分けをするのが一般的な流れです。
デシル分析:顧客を購買金額の多い順に10のグループに分ける手法
RFM分析:顧客の最新の購入日、購入頻度、累計購入金額に基づいて評価する手法
たとえばデシル分析を活用して、売上への貢献度が高い顧客に絞って特別なサービスやプロモーションを提供することで、ロイヤリティをさらに高められます。
またRFM分析の結果は、さまざまな施策に活かせます。「頻繁に購入するが、最近の購入がない顧客」に対しては、再度の購入を促すための特別割引を提供することが効果的です。一方で「高価な商品を購入する顧客」には、限定商品の案内や特別なプロモーションイベントへの招待を行って、関係性を高められます。
このように、顧客を細かくカテゴリー分けして一人ひとりに合わせた施策を打つことで、コストを下げながらも高い反響を生み出せるのです。
小売店の顧客管理における3種類の手段
小売店で顧客管理を行う手段にはいくつか種類があるため、この章で紹介します。
- 手作業による顧客管理
- POSシステムによる管理
- CRMによる管理
小売店の顧客管理の手段1.手作業による顧客管理
手作業による顧客管理は、小規模なビジネスや個人経営の店舗で有効な手法です。またドラッグストアではカウンセリングが必要な化粧品など、高単価カテゴリーの商品販売に絞って今でも手書きの顧客台帳が用いられるケースもあります。
手作業による顧客管理のメリット
- 特別なソフトウェアを必要としないため、初期投資がほとんどかからない。
手作業による顧客管理のデメリット
- 情報の入力や更新に時間がかかりミスも発生しやすい
- 顧客データの検索や分析に手間がかかるため、大量のデータを扱う場合には限界がある
- 紛失や情報漏洩のリスクが高い
手作業による顧客管理はコストのかからない手段であるものの、営業戦略に活かすには限界があり、紛失リスクなどのデメリットの多い手法です。
小売店の顧客管理の手段2.POSシステムによる管理
POSシステムを活用した顧客管理は、セルフ販売がメインとなるビジネスでは特に有効な手法です。
POSシステムを導入した顧客管理のメリット
- 購入履歴や来店履歴など多岐にわたるデータを顧客情報と統合して管理できる
- ポイントカードやクーポンの発行を接点にして効率よく顧客情報を集められる
- 効果的なマーケティング戦略を立案するための基盤が作れる
- ポイント蓄積によるクーポン発行を通じて、競合店に対し優位性を生み出せる
POSシステム導入のデメリット
- 導入にコストがかかる
このようにPOSレジを通じて、リアルタイムに顧客情報と販売情報を管理できる点はPOSシステムを導入する強みです。しかしシステムの導入にはPOSレジのみならず、専用管理サーバー、バックヤードPCなどを複数設置しなければならず、初期投資が高額になりやすい面があります。
ただし近年では、自前のパソコンやタブレットに専用のアプリをインストールして使用する機能とクラウドを併用したハイブリッド型POSシステムも登場しています。このハイブリッド型クラウドPOSシステムは、ローカルアプリケーションとクラウドの両方の利点を兼ね備えており、サーバーや専用のPCなどを必要とせず、比較的低コストで導入できることが強みです。
現状、ハイブリッド型POSシステムの登場により、POSシステム導入のハードルはぐっと下がっています。
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小売店の顧客管理の手段3.CRMによる管理
CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客管理のためのデジタルツールです。属性情報から購買履歴まで、顧客情報を一元管理できます。小売店では、POSシステムとCRMを同期させて活用するのが一般的です。
CRMを利用した顧客管理のメリット
- POSレジを通じて得られる顧客情報や販売情報を分析できる
- 顧客のカテゴリー分け
- ターゲットを絞ってのマーケティング戦略の立案・実行が行える
CRMを利用した顧客管理のデメリット
- 導入にコストがかかる
- スタッフのトレーニングが必要
このようにCRMを利用することにより、ターゲットの属性に限定クーポンや新商品情報を配信するなど、効果的なマーケティング戦略を展開できます。つまりPOSシステムで収集した顧客情報をCRMによって、効果的に生かせるわけです。
しかし、システムの導入にはとりわけ導入コストがかかります。これにはソフトウェア導入・運用にかかる費用のみならず、CRM運用に伴うスタッフのトレーニングにかかるコストも含まれます。とはいえ長期的に見るとCRMの導入は、顧客関係の強化とビジネスの成長に大きく貢献するため、投資価値のあるツールといえるでしょう。
顧客管理を成功させるための5つのステップ
この章では顧客管理の具体的な流れについて紹介します。
STEP1.情報収集
顧客管理の最初のステップは、顧客情報を収集する仕組みを作ることです。
アナログな手法としては紙媒体で顧客カードを作成する方法がありますが、セルフ販売が主流の小売店では情報収集システムを備えた、POSレジの導入が一般的です。ポイントカードシステムや専用アプリの登録により、氏名やメールアドレスなどの基本的な顧客情報や、継続的な販売データを収集できます。
STEP2.情報管理
収集した情報は、適切に管理する必要があります。
適切な管理とは「必要なときに必要な情報へと速やかにアクセスできる状態を作る」ということです。大量の情報を集めても、何がどこにあるかわからない状態ではデータの利用価値を生み出せません。
顧客の情報を手作業でExcelなどの表計算ソフトにまとめる手法もありますが、これには時間と手間がかかります。販売履歴のように更新頻度の高い情報を、まとめ続けるのは困難です。
一方で、多くのPOSシステムやCRMには、顧客情報管理機能が組み込まれており、販売データや顧客プロファイルを一元管理できます。これにより、店舗スタッフがリアルタイムで顧客情報にアクセスできます。また顧客の購入履歴はPOSレジを通じて自動で更新されるため、修正の手間はありません。
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STEP3.顧客情報の分析・カテゴリー分け
収集・管理した顧客情報は、マーケティングを効率化するために分析・カテゴリー分けします。このプロセスでは、先に紹介したRFM分析やデシル分析といった手法が一般的に用いられます。それぞれの手法の概要は以下のとおりです。
デシル分析:顧客を購買金額の多い順に10のグループに分ける手法
RFM分析:顧客の最新の購入日、購入頻度、累計購入金額に基づいて評価する手法
こうした分析は、ExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフト、またはCRMやPOSシステムを使って実行します。
STEP4.分析を生かしたマーケティング施策の立案・実行
分析・カテゴリー分けされたデータを基にマーケティング施策を立案します。
たとえば有料顧客の購買履歴を基にしたおすすめ商品の提案や、誕生日特典の提供などを実行するわけです。このようにパーソナライズされたマーケティングにより、優良顧客の満足度やロイヤリティをさらに向上させられます。
一方、新規顧客にはウェルカムキャンペーンを実施し、購買頻度が低下している顧客に対しては再来店を促すメールやクーポンを送付するなど、顧客の状況に応じた細やかなアプローチも行えるわけです。
顧客管理情報に基づき立案したマーケティング施策は、LINEや専用アプリ、メールマガジン、CRMシステムを使って実行します。実行する際の注意点は、施策に対する目標値を設定する点です。クーポンの使用率や、リピート購入率など具体的な目標を決めてから施策を打つ必要があります。
STEP5.マーケティング施策の効果検証
顧客情報を基に実行したマーケティング施策の次に行うべきステップは、その効果を検証することです。施策の効果を検証することで、どの施策が有効であったかを把握し、今後の戦略に反映させられます。
POSシステムやCRMから得られるデータを活用して、施策の効果を分析します。たとえば、特定のキャンペーンを実施した後の売上の変動や目標の達成度合いを追跡するわけです。ターゲット顧客の購買履歴や行動データを分析し、どの施策が顧客の行動に効果的に影響を与えたかを把握します。
効果検証の結果に基づき、必要に応じてマーケティング戦略を修正します。効果が高かった施策はさらに強化し、効果が低かった施策は改善または中止するといった具合です。
STEP3〜5のサイクルを回し続けながら、最適な戦略を確立していくことで、顧客管理の成功に結びつきます。
まとめ
この記事では、顧客管理を行うメリットや、顧客管理を使った営業戦略を成功させるための方法について詳しく解説しました。顧客管理は、顧客との関係を維持・向上させるための大切な手段です。今後ますます小売店の競争が激化する中で、顧客の満足度やロイヤリティを高めるために顧客管理の取り組みは必須といえます。
顧客管理を行うメリットは以下の3種類です。
- 既存顧客にアプローチできる
- 顧客情報を生かして販促を打てる
- 顧客を細かくカテゴリー分けしアプローチできる
このように、顧客に応じてパーソナライズされたマーケティング施策を打てるようになるのが顧客管理を行う強みです。こうした背景があるなか、セルフ販売が主流となっている小売店においては、特にレジの販売データを顧客に紐づけて管理できるPOSシステムの導入が重要といえます。
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