フードデリバリー事業を始めれば、新たな顧客を獲得して売上アップにつなげられるかもしれません。しかし、デリバリー事業を成功させるためには、正しく準備したうえで営業をスタートする必要があります。
そこで本記事では、フードデリバリーの始め方を7つのステップに分けて紹介します。今後デリバリー事業をスタートさせようと考えている場合には、本記事の内容をご参考にしてくださいね。
「注文管理が大変そう」を解消できる、デリバリー支援システム
フードデリバリー事業を始めれば新たな収入源を作れる
フードデリバリーを始めれば、立地に左右されず広範囲の顧客にリーチできるようになるため、新たな収入源を作れます。
これまで店を知らなかった顧客にもアプローチでき、料理を気に入ってもらえれば「次はイートインで食べてみよう」と、呼び込みにつながるわけです。
また、たとえ人気店であっても客席や駐車場の数に限りがあるため、売上や利益にも上限があります。しかし、デリバリーにはスペースの問題が関係しないため、収益の上限をより高められます。
新たにフードデリバリーを始めるメリット
- 立地に依存せず、幅広い顧客にアプローチできる
- イートインへの集客を促進できる
- 席数や駐車スペースによる制限がなくなり、収益のベースを高められる
フードデリバリーを始めるハードルは下がってきている
フードデリバリーを始めるにあたっては、人員を増やしたり車両を購入したりとハードルの高い面がありました。一度はデリバリー事業の新設を検討してみたものの、営業を始めるまでの障壁の多さから断念してしまった経験があるかもしれません。
しかし、近年はテクノロジーの進化によって、フードデリバリーを始めるハードルが大幅に下がってきています。たとえば、Uber Eatsや出前館などフードデリバリーサービスを利用すれば、外部の配達パートナーが自前の自転車やバイクで配達を代行してくれるわけです。これにより配達スタッフを雇用したり、車両を購入したりする必要がなくなります。
また従来は電話で受注対応していたため、聞き間違いによるオーダーミスが発生しやすい環境でした。その点、フードデリバリーサービスを活用すれば、注文の受付を自動で管理でき、オーダーミスのリスクが減少します。そのため店の業務負担も軽減されるわけです。
フードデリバリーサービスの普及により、従来は導入までの障壁が多かったデリバリーを、比較的手軽に始められる時代になっています。
フードデリバリーの正しい始め方7STEP
フードデリバリーを始めれば売上アップが期待できます。とはいえ、正しいやり方で始めなければ利益が生み出せず、コストばかりが増える事態になりかねません。
そこでこの章では、デリバリー事業の正しい始め方を7つのステップに分けて解説します。
- デリバリーの方法を選定する
- 利用するサービスを定める
- メニューを設定する
- 容器を選定する
- メニューの価格設定をする
- 衛生面の対策を実施する
- デリバリーに必要な許認可を確認する
STEP1.デリバリーの方法を選定する
フードデリバリーを始める際にまず検討すべきは、デリバリーをどのように始めるかです。デリバリーの方法には以下の3つのパターンがあります。
- 自前方式
- 外部委託
- 自前と外部委託の併用
これらの方法には、それぞれ一長一短があるため詳しく解説します。
自前方式
フードデリバリーサービスを使わず、自店のリソースのみでデリバリー業務を行う自前方式は、従来どおりのスタイルです。
フードデリバリーサービスの利用に際してかかる配達手数料の相場は、売上の35%程度。店にとっては大きな負担です。その点、受注から配達までを全て自前で行うメリットとして、配達手数料がかかりません。
また自店のスタッフが配達を担当するため、お客様から苦情を受けた際に教育を行い、速やかにサービスの改善につなげられます。
一方、自前で行う方法にはデメリットもあります。配達用車両の準備に初期投資が必要であったり、スタッフの人件費がかかります。加えて受注システムを利用しないスタイルのため、受注管理がマンパワー頼みになりやすく、オーダーミスが発生しがちです。
このように自前でデリバリーを始める場合、配達手数料はかからないものの、結果として店舗への負担が大きくなる可能性があります。
外部委託
外部委託とは、Uber Eatsや出前館などのフードデリバリーサービスに注文から配達まで全てを委託する手法です。この方式のメリットとして配達スタッフの雇用や車両準備が不要で、手軽に始められる点が挙げられます。また受注システムを利用することで、受注業務や会計業務の負担を大幅に軽減できます。
一方、デメリットとして販売手数料が一件ごとにかかるため、コストが増大してしまいます。一般的に、手数料の相場は売上の30〜35%と高額です。価格設定において手数料を考慮する必要があるため、値ごろ感の演出が難しくなることがあります。
また不特定多数の配達員に外注するため、配達オペレーションの品質管理が難しく、顧客満足度が低下するリスクも否定できません。外部委託方式はデリバリーを手軽に始めるために有効な手法ですが、販売手数料の負担や品質管理の難しさなど、さまざまな課題も伴います。
自前方式と外部委託の併用
フードデリバリーサービスを利用して受注管理を行いながら、配達は自店スタッフが行う手法も取れます。この方法のメリットは、販売手数料を10〜15%程度に抑えられる点です。またオーダーミスを防ぎやすく、配達業務の質を向上させられます。つまり自前方式と外部委託の「いいとこ取り」が可能です。
一方、デメリットとしては、車両や配達スタッフをそろえる必要があります。また、店の状況に応じて適切な人員配置が要求されるため、運営マネジメントの難易度は高めです。注文が殺到する際に料理の提供遅延が生じ、顧客満足度の低下につながる恐れがあります。
フードデリバリーサービスを利用した正確な受注管理の恩恵を受けながら、販売手数料を減らせる点が、自前方式と外部委託を併用する強みです。一方、完全に外部委託に頼るよりも参入のハードルは高いところがあります。
デリバリーの方法まとめ
デリバリーの方法は大きく分けて3種類あるため、それぞれの方法の概要やメリット・デメリットを以下にまとめます。どの方法でデリバリーを始めるか検討する際にご活用ください。
自前方式 |
外部委託 |
自前方式と外部委託の併用 |
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概要 |
受注から配達まで全て自前で行う方式 |
受注から配達まで全てフードデリバリーサービスに任せる方式 |
フードデリバリーサービスに受注管理を任せ、配達は自前で行う方式 |
メリット |
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デメリット |
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このようにいずれの方法を選ぶにしろ、一長一短があります。自店の状況に応じて適切な方法を選択しましょう。選択するデリバリーの方法によって次のステップが異なります。自前方式を選ぶ場合にはSTEP3へ、外部委託、または自前方式と外部委託を併用する場合には、STEP2へとお進みください。
STEP2.利用するサービスを定める
デリバリーの方法が定まったら、どのようなサービスを利用するか決めていきましょう。
フードデリバリーサービスと聞くと、Uber Eatsや出前館のようなサービスを思い浮かべるかもしれませんが、自社型ECを構築する手段もあります。自社型ECとはオリジナルの注文アプリです。導入に際して、アプリ制作会社へアプリ開発を依頼するのが、一般的な流れです。
自社ECは、フードデリバリーサービスや配達員を利用しない代わりに販売手数料がかかりません。メニュー料金を決める際に手数料を考慮する必要がなく、値ごろ感のある価格でメニューを提供しやすくなります。しかし、自社型ECは導入コストがやや高額になりやすい傾向です。
一方で、フードデリバリーサービスを利用する場合、サービスの持つ集客力を活かせるため、導入直後から安定した集客を見込めます。しかし、売上に対して手数料がかかる仕組みのため、利益を確保できるようにメニューの価格を調整する必要があります。
このようにフードデリバリーサービスを使うか自社ECを使うかによって、強みと弱みが大きく異なるため、どんなサービスを使うかじっくり検討したいところです。
以下の記事では、フードデリバリーサービスと自社EC、それぞれの特徴やメリット・デメリットについて詳しく解説しています。
関連記事:飲食店がフードデリバリーサービスを使うメリット・デメリットを徹底解説
どのサービスを利用するのか選ぶ際には、上記の記事をぜひご覧ください。
STEP3.メニューを設定する
どのようにデリバリー事業を始めるかが決まったら、次にメニュー設定を行います。店内での看板商品を必ずメニューに含めましょう。すでに実績のある商品は、新規顧客にも受け入れられやすく、常連客をデリバリー利用のターゲットにもできます。
またデリバリー限定メニューの作成も、購買意欲を引き出すために効果的です。旬の食材を使った季節限定メニューや、食べやすさを強調したメニューの開発がおすすめできます。デリバリーはお客様への提供時間を早める工夫が必要なため、短時間で提供できる限定メニューを打ち出す施策も有効です。
さらにサイドメニューやドリンクなどを組み合わせたセットメニューを、値ごろ感のある価格で提供する手法も、多くの店舗で取り入れられています。
まとめると、以下のような視点でメニュー選定を行っていくことがおすすめです。
- 看板メニュー
- 季節限定メニュー
- 食べやすさを強調したメニュー
- 短時間で調理できるメニュー
- セットメニュー
STEP4.容器を選定する
メニューが決まったら、次に容器を選定します。
容器のコストは商品原価に含まれるため、基本的には安価なプラスチック容器の選択がおすすめです。しかし安価な容器には弱点があり、振動によって汁漏れが発生したり、熱に耐えられなかったりするなど、万能ではありません。
特に汁物やソースが多い料理の提供には、汁漏れ防止のために密閉性の高い容器や、しっかりと蓋の閉まる容器を選ぶべきです。弁当系のメニューでは、食材が混ざらないように仕切りのある容器を選ぶことで、見た目の良さをキープできます。
さらに配達後、お客様が自身で温め直しを行う傾向にあるため、容器が電子レンジに対応しているかどうかもポイントです。このようにデリバリーの容器を選ぶ際にはコストのみならず料理の特性に応じたものを選ぶことで、顧客の満足度を高められます。
STEP5.メニューの価格設定をする
提供するメニューの種類と容器が決まったら、メニュー価格を設定します。
販売手数料や容器代を考慮すると、採算を取るには店内で提供する場合の1.5倍程度の価格に設定しなければなりません。確かに店で食べるよりデリバリーを頼むほうが高額になる点に対し、顧客は一定の理解を持っています。とはいえ、相場を逸脱した高い価格設定では、注文が入りづらくなってしまうのも事実です。
そのため価格の相場を知るため競合店をリサーチしましょう。Uber Eatsや出前館で同ジャンルの競合店を調べ、価格の相場を把握します。相場がつかめたら、自店の商品を同程度の価格で出品できるように工夫していくわけです。
たとえば、量目を減らして原料コストを抑える手段があります。
具体的には、ハンバーグを店舗では300g提供しているところを250gにしたり、唐揚げを4つから3つに減らしたりして、相場に提供価格を合わせていくイメージです。もっと量を食べたい顧客向けには、オプションでサイズや個数を追加できるようにしておけば、誰もが満足できるメニュー展開が実現します。
また粗利ミックスを図れば利益を安定させられます。利益の低い人気商品とともに利益の見込める商品をバランスよく出品し、魅力的なメニュー展開と価格設定を両立させていくわけです。
メニューの価格設定は、デリバリー事業の成否を左右する最も重要な要素の一つといえます。安定した利益を確保しつつ、顧客満足度を高められる価格設定を追求しましょう。
STEP6.衛生面の対策を実施する
衛生管理が徹底されていないと、食中毒の発生リスクが高まります。食中毒を引き起こしてしまうと、顧客の信頼を失ったり営業停止になったりといった事態が避けられません。
スタッフの衛生管理、調理時、配達時の3点に着目して、衛生管理の体制を事前に整えるべきです。
①スタッフの衛生管理
スタッフには、調理や食品を取り扱う前後に石けんで念入りに手洗いする習慣をつけてもらいます。公益社団法人日本食品衛生協会では、正しい手洗いマニュアルが公開されているため、参考にするとよいでしょう。
また定期的な健康チェックを行い、体調不良のスタッフには食品の取り扱いを避けてもらう配慮も必要です。
②調理時
調理器具や作業台は常に清潔に保ち、使用後はすぐに洗浄・消毒を行います。
特に肉や魚を扱う際には、クロスコンタミネーション(交差汚染)を防ぐため、専用のまな板や包丁を使用し、他の食材と分けて管理することが重要です。清潔な環境で保管した容器や袋を使い、外部からの汚染を防ぐ配慮も欠かせません。
③配達時
配達車両やバッグも定期的に清掃して衛生的な状態を保ちます。また清潔感のある身なりで、顧客へと商品を届ける心がけも大切です。ただし外部の配達員に委託する場合には、衛生管理への対策が打ちづらいところがあります。
また顧客による商品の常温での放置により、食中毒が生じる懸念もあるため、注意喚起のメッセージを添えると、なおよいでしょう。
このように、調理時から配達時まで衛生管理体制を整えることで、安全にフードデリバリーを営業できるようになります。
STEP7.デリバリーに必要な許認可を確認する
フードデリバリー事業を始めるにあたって、許認可を受ける必要があるかは、確認しておくべきポイントです。
通常、飲食店としてすでに営業許可証を取得していれば、新たな許可の取得は不要なケースが多いもの。しかし、扱う商品や調理方法によっては、新たな許可が必要になるケースがあります。
たとえば、肉料理を中心に提供している店が加工前の「肉」を提供する場合には「食肉販売業」、料理に使う自家製ソースを別売りする場合には「ソース製造業」の許可が必要です。
販売する食品の種類によって細かな規定があるため、必ず保健所に相談して、必要な許可や届出がないかを事前に確認しておきましょう。
まとめ
フードデリバリーを始めれば、新たな顧客層へとリーチして売上や利益の向上が見込めます。これまで、イートインのみで経営してきた飲食店にとっては、魅力的に感じられるかもしれません。
ただし実際にフードデリバリー事業を成功させるためには、正しく事前準備を進めてから、営業をスタートさせる必要があります。本記事ではフードデリバリーを始めるまでの手順を7つのステップに分けて紹介しました。
もう一度おさらいしてみます。
- デリバリーの方法を選定する
- 利用するサービスを定める
- メニューを設定する
- 容器を選定する
- メニューの価格設定をする
- 衛生面の対策を実施する
- デリバリーに必要な許認可を確認する
上記の手順で準備を進めていくと、デリバリー事業を成功させられる可能性を高められますので、ぜひお試しください。
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